創業以来守り続けてきた
高精度の「ワイヤーハーネス」
当社は自動車・船舶・農業機械・建設機器など、あらゆる産業機械の内部を走る電線の束、いわゆる「ワイヤーハーネス」を製造している会社です。ワイヤーハーネスは、人体で例えるなら神経や血管のようなもので、機械を動かす上で欠かせない非常に重要な部品です。1987年の創業以来、当社は「純国産」「自社一貫」という姿勢を崩さず、製造設計から加工・組立・検査まですべて自社で完結させる体制を築いてきました。現代においても大半の工程が手作業であるため、一人ひとりの技術力が品質を左右します。そのため、全員が「多能工」として活躍できる技術者の育成に長く力を注いできた結果、現在、国産ワイヤーハーネスメーカーとして業界でも指折りの存在になっています。高品質はもちろん、短納期や設計変更といった急なご要望にも柔軟に対応できる点を強みに、大手メーカーからも厚い信頼をいただいています。当社が製作するハーネスは、1回路の小さなものから数百回路の複雑なものまで幅広く、小・中ロットの量産を得意としています。「急に改修が必要になった」「納期がどうしても厳しい」「引き受けてくれる委託先が見つからない」といった相談にも、できる限り柔軟に応えられる体制を築いています。また、製品づくりにおいては「量より質」に一貫してこだわり、国内生産と自社一貫体制を徹底してきたおかげで、コロナ禍のような混乱期にも資材調達が滞らず安定した生産ラインを維持。それが追い風となって大幅な業績拡大につながりました。これは、海外委託が中心の企業ではなかなか難しい部分であり、当社ならではの強みであると感じています。
分業に頼らず多能工を育成し、
助け合える組織体制を確立
ワイヤーハーネスは、複数の電線に端子を取り付けてテープやチューブでまとめて生産します。見た目以上に繊細で根気のいる仕事で、ほとんどが手作業です。機械化しづらい領域だからこそ、職人の技術と集中力が欠かせません。この仕事はもともと女性が担うことが多かった背景もあり、当社でも社員の約9割が女性。しかもその半数以上が子育て中です。だからこそ、勤務時間の柔軟な調整はもちろん、社内に臨時託児所を開設するなど、働きやすい環境づくりにはひときわ力を入れてきました。そんな働きやすさの土台にあるのが、当社が創業当時から続けている「多能工」の育成です。製造業では生産効率を優先し分業化を進める会社も多いのですが、当社は必ずしも分業が最適だとは考えていません。分業は習熟が早い反面、担当作業が限定され、やりがいや責任感が育ちにくい側面もあるからです。その点、多能工は違います。工程全体を理解し、あらゆる作業をこなせる職人がそろっていることで、急な仕様変更や不測の事態にも柔軟に対応できます。誰かが休んでも他のメンバーがカバーできるため、子育て中の社員にとっても安心して働ける環境になります。そして、忘れてはならないのが会社全体に流れる「町工場のようなアットホームさ」です。規模こそ企業組織ですが、社内の雰囲気は非常に穏やかで、メンバー同士の距離も近い。その中に、長年勤める頼もしいベテランが多く在籍しているのも大きな強みです。今後も、彼女たちが持つ技術と経験を活かしながら、広い視野で組織を引っ張っていけるリーダーの育成にもさらに力を入れていきたいと思っています。
ご縁に支えられて歩んだ日々
地域とともに、想いを未来へ
先代の父の急逝で私が社長に就任したのが2005年。心の準備もままならない中でのバトンタッチ。その後のリーマンショック。まさに会社の存続すら危うい状況でした。それでも今日まで歩んでこられたのは、長年支えてくださった取引先、そして周囲の皆さまの温かい支援のおかげです。どんな逆境でも「ユタカさんが必要だ」と言ってくださるお客さまがいて、期待に応えたい一心で踏ん張ってきました。コロナ禍で海外からの調達が止まったときも、「きっと何とかしてくれる」と信頼を寄せていただいたことは大きな励みでした。そうしたご縁の積み重ねが新規の取引にもつながり、売上も着実に伸び、これまでの取り組みが間違っていなかったと実感できるようになりました。ただ、当社の仕事はお客さまの景気に左右されやすいのも事実です。だからこそ、より多くの分野とつながり、安定して受注できる体制を整えることが重要です。今後も積極的なPRや社内改革を進め、新たなビジネスチャンスをつかみにいきたいと考えています。
環境と社会への責任を果たし
次世代へとバトンをつなぐ
当社はお客さまへの価値提供に加え、地域と社会への恩返しにも注力しています。そのひとつがSDGsへの取り組みです。環境負荷の低減に本気で向き合い、2025年には温室効果ガス削減が国際基準を満たした証である「SBT認定」を取得。脱炭素経営を軸に環境に優しい企業づくりをさらに進めていきます。品質面ではISO9001取得以来、開発から製造・納品まで全工程で安全と品質を厳しく管理してきました。安心を届けるという企業の責任は今後も揺らぎません。そして、次世代育成も重要なテーマです。若い世代の価値観の違いを認めて歩み寄り、新しいリーダーを育てたいと思っています。当社には設計から検査まで多様な業務があり、適性に合う「居場所」が必ず見つかります。一人前になるには時間もかかりますが、ものづくりの喜びを感じながらぜひ成長してほしいです。現在は社内もフル稼働で、土地や人材の確保が整えば事業拡大に挑戦できる状況を迎えています。国内回帰の追い風もあり、市場シェアを広げる大きなチャンスですが、経済の先行きは読みにくく、慎重さと前向きさを両立させた舵取りが必要です。悩むことも多いですが、それは「会社をもっと良くしたい」というポジティブな悩みです。地域とお客さまへの感謝を胸に、次の世代へ確かなバトンを渡すためにこれからも挑戦を続けていきます。