株式会社くらもち

1961年、配合飼料、鶏卵、動物薬品の販売を始めたのが弊社の長い歴史の第一歩です。その後、1965年に有限会社倉持新一商店を設立。以来、食卓に欠かせないものとして長く日本人に愛されている卵の生産・販売を主事業に歩みを重ねてきました。自社農場を保有し、食品工場たるGPセンターによって、「安全」で「味わい」のある卵を生産・販売してきた弊社でしたが、もっと私たちの独自性やこだわりを打ち出したいと強く思うようになりました。折しも飼料を生産する農家が激減するなどマーケットが縮小。このまま画一的な卵を生産していくことの危機感もありました。
そこで、一念発起してヨーロッパで主流の飼育方法である「平飼い」の視察にオランダ、ドイツに出向いたのです。平飼いとは、鶏舎内で放し飼い状態にする飼育方法。自由に動けるのでストレスも少なく食欲も旺盛で、鶏はのびのびと育ちます。ちょうどヨーロッパでケージ飼いが禁止される直前。そこで目にした光景は衝撃的でした。とにかく鶏が元気に飛び回り、卵を巣箱で産むシステムが確立されている。歩き回る場所で卵を産まないので、卵が鶏ふんで汚れずきれい。この視察が後の弊社の行方を大きく変えることになります。

当時の日本では、まだ平飼いは一般的ではなく、設備も飼育方法も定かではありませんでした。私たちはオランダ製の設備を取り寄せ、海外メーカーや商社と対話しながらオリジナルの平飼い鶏舎を設計。３年ほど試行錯誤を繰り返した末、多段式でジャンプ運動を誘発し、リラックスして卵を産める巣箱を設置。足元を網目状にすることで、鶏ふんを下に落として清潔さを保つ仕組みをつくりました。これは「くらもち式」と呼ばれ、ヨーロッパでも注目されています。さらに、止まり木を付け、夜は自然に近い形で眠れるよう工夫を施し、水飲み場や餌場、眠る場所を分けることで移動を促す仕掛けも。万歩計を取り付けたところ、１日なんと１万5000歩も歩き回る環境をつくることができたのです。
こうした環境で生活する弊社の鶏は、ストレスがなく健康的。その卵は、美味しくて栄養たっぷりです。当初は、高価格帯ゆえに消費者から受け入れられませんでしたが、動物福祉の考え方が普及するにつれて潮目が一気に変わりました。どんどん引き合いが来るようになり爆発的に売り上げを記録。社員みんなと感動を分かち合いました。

今年は新卒でも５名採用することができました。新卒の子は、社会経験がなくまっさらの状態なので、しっかりと育成するための教育プログラムを整備しています。まず社外コンサルタントによる社会人としての基礎を学ぶ一般研修を経て、農場、工場、鶏卵GPセンター、本社業務など、すべての部署を経験してもらいます。その後、適性を見て各部署に配属される流れです。
どこの部署で働いても、根底に流れているのは鶏と卵に対する愛情です。「美味しい卵をもっともっと社会に広めたい」という気持ちが社員一人ひとりの中に潜在しているはずです。実際に平飼いを始めてから鶏に対する愛情は間違いなく増しました。ケージ飼いの鶏は、餌を手にのせて差し出しても無反応なんです。でも、平飼いの鶏はすぐに寄ってきて突っついてくる。ペットみたいで生き物として魅力的です。すべては卵のために、鶏のために。その思いが、私を含め社員全員の原動力であり、大きなやりがいとなっています。