名は知らずとも誰かの思い出の味
お土産に宿る物語を形にする会社
当社は1986年の創業以来、お土産用のお菓子を専門に手がけてきました。全国各地の水族館やテーマパーク、観光スポット、サービスエリアなど、人が集まる場所に並ぶお菓子が主なフィールドです。パイやチョコレート、クッキー、ゴーフレット、ご当地キャラクター商品まで、幅広い商品を製造しています。社名が表に出ることは多くありません。PB商品(プライベートブランド)を中心とした受注生産のため、商品には取引先様のブランド名が並びますが、旅行先で「見たことがある」「食べたことがある」というお菓子の中に、実は当社が関わっているケースは少なくないと思います。東京駅のような全国から多くの人が集まる場所でも、一番売れている商品の一つが実は当社製ということもあります。表に出ず裏側で支える「黒子」のような仕事ですね。私たちは、ただお菓子を作る会社ではありません。ご当地原料の活用や施設に合った商品づくりなどの相談を受け、企画から価格設計、パッケージ、製造・加工までを一貫して提案しています。いわば、取引先のプライベートブランドを一緒につくる感覚に近いと思います。日常生活においてお土産は必需品ではありませんが、贈る人と贈られる人の間には必ず物語があります。そのやりとりをお菓子が担っていることに、この仕事の面白さがあると私は思っています。私たちは皆さんの思い出にそっと華を添え、笑顔を生む存在でありたい。お菓子の持つワクワク感を大切にしながら、「お菓子(おかし)な会社」であり続けたいと常に考えています。
主力菓子に宿るツジセイ製菓の強み
積み重ねた技術が大阪・関西万博で花開く
当社の看板商品はパイです。創業以来、長年研究を重ねてきた独自製法で、生地を何度も折り重ね、サクッとした食感と香ばしさを生み出しています。定番のフルーツ系に加え、ご当地の素材を使った商品開発も得意分野です。また、ゴーフレットは薄く焼き上げた生地に軽やかなクリームを挟んだ人気商品で、施設やターゲットに合わせて味や色味を柔軟に変えられるのが強みです。クッキーやチョコレートも、温度や湿度、焼成条件を細かく管理しながら、味を第一に考えて製造しています。こうした地道な積み重ねが、「ちゃんと美味しい」お土産につながっています。私が社長に就任してからは、ものづくりに加えてブランドづくりにも意識的に取り組んできました。その象徴が、公式キャラクターの「ぱいすけ」です。リブランディングの中で誕生し、高松空港や音楽フェスなどのイベントに着ぐるみで登場したり、高松駅構内をポスターでジャックしたりと、当社の名前を知ってもらうきっかけをつくってきました。こうした当社の総合力が試されたのが、2025年の大阪・関西万博でした。会場内のお土産を担当し、製造も配送もほぼフル稼働。全社挙げての総力戦で、私自身も覚悟を決めて毎週のように現地へ配達に出ました。本当に毎日が戦場のようでしたね。今回は会場内に加え、駅や空港などの外売り・中売りも含めて請け負いましたが、その背景には2005年の愛・地球博での経験があります。先代から積み上げてきた、売れる商品の考え方や現場対応のノウハウがあったからこそ、今回も信頼して声をかけていただけた。ものづくりの技術、ブランドづくりへの挑戦、そして現場で踏ん張る力、それらを積み重ねてきたことが、今の私たちの強みだと実感しています。
売上98%減から生まれた新事業
最大の危機が最大の転機に
業績はここ5年ほど右肩上がりで、2025年度は創業以来過去最高の売上を記録しました。しかし、そこに至るまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。最大の転機となったのは、2020年から約3年にわたって社会を覆ったコロナ禍でした。2020年4月、最初の緊急事態宣言が出た瞬間、観光は一気に止まりました。売上は単月で98%減。ゴールデンウィークに向けて準備していた3,000~4,000ケースの商品が、行き場を失い倉庫に積み上がったまま動かない。その光景を前に、ただ立ち尽くすしかなかったことを、今でもはっきりと覚えています。正直、打つ手はほとんどありませんでした。だからこそ、ある時「どうにもならないなら、今まで忙しくてできなかったことをやろう」と気持ちを切り替えてみたんです。そうして動き出したのが、高松市中心部の自社ビルを活用した新事業でした。2021年に立ち上げたエッグタルト専門店「讃岐三白」では、和三盆や卵といった素材にこだわり、これまで培ってきた製法を注ぎ込みました。同時にEC事業も本格化し、自社サイトやECモールでの販売に踏み出した結果、おかげさまで今では着実に売上を伸ばしています。当時の当社はBtoBが中心で、売上の9割以上が県外向け。地元向け商品は全体のたった5%ほどにすぎませんでした。地元に支えられてきた会社としてそれでいいのか。コロナ禍はそんな問いを突きつけられた時間でもあったと思います。あの危機がなければ、新しい事業に踏み出すことも、視野を広げることもなかった。最大のピンチが、当社にとって次の一手を生む原動力になったことは、間違いありません。
全ての人に与えるGIVERであれ
BigよりGoodな会社であり続けたい
今後は設備投資を進めながら、省力化と効率化をさらに高めていきます。来年には自動ロボットによる箱詰め工程の導入も予定しており、人の手でしかできない仕事に、より集中できる現場をつくっていきたいと考えています。同時に、働く環境づくりも重視しており、食堂にはしっかり休めるスペースを設け、畳敷きや個室型の休憩場所を整えるなど、社員がリフレッシュできる環境を少しずつ形にしてきました。私がいつも社員に呼びかけているのが「GIVERであること」。見返りを求めず、まず与える姿勢を、お客様にも仲間にも持ち続けてほしい。ごく基本ですが、組織にとっては欠かせない要素だと思っています。もう一つは「拙速は巧遅に勝る」。考え込むよりまず動く。失敗してもまた挑戦すればいい。社員一人の失敗で会社が潰れることはありません。そして、売上や規模を追うだけでなく、「ビッグよりグッド」を目指すこと。みんなで面白がりながら、前向きに挑戦を続けていける会社でありたいと考えています。