精肉加工で培った技術を
冷凍食品、惣菜製造に
食べものは人間が生きる上で絶対に欠かせないもの。どんなに時代が変わっても、食品だけは必ず残る産業です。ただ、人々の嗜好性や生活様式の変化に柔軟に対応していかないと生き延びることの難しい業態でもあります。例えば、コロナ禍で外食が減り、テイクアウトが増えたというのも外部環境の変化の一つ。私たち食品加工会社もそうした需要の変化をウォッチしながら、商品開発・業態開発に知恵を絞らなければなりません。弊社は、今から半世紀前の1967年に松戸市綜合卸売市場の中で始めた精肉卸店がスタート。精肉加工には長年の熟練が必要で、そこで培った食品加工技術は、その後の冷凍食品、お総菜などの製造にも生かされています。現在、業務用食品の製造卸では、硬い牛肉を柔らかい食感に変えるインジェクション加工という独自のノウハウを活用した牛肉加工、コロッケ・ハンバーグなどの冷凍食品、煮物・サラダなどの惣菜事業が3つの大きな柱に育っています。松戸と野田にISO9001に準拠した3工場をもち、安心・安全を第一にすえた生産ラインで、コロッケは1日20万個の生産能力を擁しています。これらの業務用食品は主に中堅ハムメーカーや外食チェーン店などにOEM(相手先ブランドでの生産)として提供されています。首都圏に本社・工場をもつ立地は、東京本社の食品メーカーや外食チェーンとの取引では優位に働きます。お客様を工場に案内し、その場で試作品を試食していただき、新商品の検討などを行うことができます。加えて、小回りの効く小ロット生産に対応している点も、移り変わりの激しい食品業界では重宝されているところです。
より消費者に近い方へ
惣菜販売店を首都圏に展開
これらが流通経路でいえば川上・川中に位置する事業だとすれば、川下への展開にも熱心に取り組んでいます。品質と価格に自信があるからこそ、その美味しさを消費者に直接届けたいという思いで2015年から始めたのが弁当・惣菜小売店「おそうざい村」。現在、都内、茨城、千葉のショッピングセンター内に6つの店舗を展開しています。大企業では分業体制が当たり前で、生涯働いても業務の一部分しか担当できないことはよくあります。その点、中小企業は社員数が少ない分、何でもまかされるという利点があります。直営で「おそうざい村」を展開するのも、普段は製造ラインで働く社員たちにも、消費者と相対して食品を提供する楽しさと責任を体験してほしかったからです。昨今、指摘されるフードロスの問題に直面することもあり、そうした経験は自分たちが作る食品を見直すきっかけにもなります。
スーパースターではなく
素直さと研究熱心さ
人材育成にあたっては「スーパースターは要らない」というのが私のモットー。一人のスター社員よりも、チームが発揮する力の方が偉大です。一つの価値観に閉じこもるのではなく、多様な意見を取り入れる素直さも求めたいと思います。手作りの味や健康に良い素材が重視される一方で、最新テクノロジーを使った新しいタイプの食品がもて囃される時代。だからこそ私たちは絶えず消費者や業界の動きに敏感でなければなりません。最近の若い人は新聞を読まないので、私は毎週、業界に関する話題を切り抜いて社内の掲示板に張り出したりしています。私の家の食卓にも競合他社の惣菜がよく並びます。私自身が日々の研究と実践が大切だと考えているからです。