世界経済はグローバル化から
リージョナル化へ
HSL Japanは、アルカリ電池やマンガン電池といった使い捨ての一次電池や、充電して繰り返し使える二次電池などの電池材料を調達し、世界トップクラスの電池メーカーへと提供する商社です。電池市場は世界規模で、数社のトップメーカーが世界シェアの約半分を占めている状態です。そのため、私たちも世界経済を注視しながら仕事を進める必要があります。かつては「グローバル化」「グローバル人材」という言葉が盛んに使われていましたが、米中対立を機に、世界経済はグローバルからリージョナルへと変化してきています。象徴的なのはアメリカによる相互関税で、これにより、今後はアジアやヨーロッパ、北米といったリージョナル(地域)でのブロック経済が進むと予測されます。アジアでは、日本、中国、韓国が中心となり、さらにASEANが加わってブロックを形成するでしょう。その中で、今後5年から10年で著しい成長を遂げるのは東南アジアです。その理由は、中国からアメリカへの直接輸出が難しくなっていくため。これを見越して、現在、多くの中国企業がベトナム、タイ、マレーシア、インドネシアへ進出しており、それらの国で簡単な最終加工だけを行い「Made in Vietnam」などとして輸出しています。現状は単純な加工だけですが、将来的には現地で材料から調達する流れが見込まれ、今後も東南アジアは成長基調です。一方、日本はというと、原材料の技術や品質で依然として高水準を誇り、引き続き注目を集めるでしょう。海外拠点として、香港、中国、アメリカ、シンガポールに現地法人を置く当社。日本の材料メーカーで生産された素材がマレーシアで加工され、それをシンガポールの当社現地法人が仕入れてインドネシアへ販売するという、新しいビジネスモデルがスタートしています。このように、今後は地域内で完結するリージョナリゼーションが主流になると思います。
一次電池の需要のピークは
2030年代半ばになると予想
次に、一次電池についてですが、電池の需要が伸びるのは残念ながら戦争と災害時です。そうした状況下では充電が困難だからです。世界各地で戦争や紛争が続いている現状に加え、消防署や警察、市庁舎など災害に備える機関では、今後も一次電池の需要がなくなることはないでしょう。また、現状、マンガン乾電池はまだ年間に百数十億個という単位で製造されており、それが今後アルカリ電池にシフトし、2030年代半ばに需要がピークを迎える見通しです。その後は少しずつ減少していくわけですが、環境や世界情勢によって多少の変動はあるものの、当社のビジネスのピークはまだもう少し先だろうと考えています。
開発が進む全個体電池が
自動車業界のゲームチェンジャーに
最後に、車載用電池についてです。現在のEV(電気自動車)は、充電インフラの不足や航続距離の短さから販売が伸び悩んでいます。この状況は今後5年ほど続くでしょう。そして、ゲームチェンジャーとなるのが全固体電池です。全個体電池の開発は日本が世界に先行しており、実用化されれば、航続距離は少なくとも倍増します。さらに画期的なのは、従来の電池にあった電解液やセパレーターがないということ。従来の電池では急速充電に耐え切れず爆発のリスクがあったのに対し、全固体電池は充電時間が短縮され、爆発のリスクも減少。実用化は目前に迫っており、5年後には徐々に搭載が始まるでしょう。その結果、ガソリン車やガソリンスタンドは減少し、反対に全固体電池を搭載したEVと充電スタンドが増加するなど、自動車業界を取り巻く環境は一変すると予測されます。世界が大きく変化する中、私たちも継続的な学びで未来を捉え、既存のビジネスの中でも多角化を図るなど、事業にまい進してまいります。