経営指針を学んだことで
「社員の幸せ」が大事だと気づいた
当社は、木造住宅の資材販売、自社職人による屋根や外壁の施工、住空間の企画提案といった、住空間に関わるもの全てにおいて新しい住宅ニーズを提供し、「より快適な安心・安全な住空間を提供できる会社」を目指してきました。もともと資材の販売や施工といったハード面の事業が中心でしたが、3Dを利用するなど住まいにおける細かな提案力など、地方工務店ではなかなか難しいソフト面を幅広く請け負えるようにと事業の幅を広げているところです。私は大阪出身で、高校から社会人まで野球に打ち込んできました。大手建材メーカーでサラリーマンをしていましたが、ご縁があり当社へ転職、実績を積み、先代から事業を承継しました。経営者としてスタートした当初は、社内での情報共有不足、拠点どうしのつながりの希薄さによる、風通しの悪さやコミュニケーション不足が課題だと感じていました。新たな社風を作りたいと、石川県同友会の勉強会である「経営理念」について学びました。それまで私は、ただ「儲ければいい」と考えていました。勉強会で自分が大事にしたいものは何だろうと考えたときに、自分の「想い」に気づきました。野球では私にとって「仲間」が大事でした。今は、社員が一番だと。大事な社員が幸せになるにはどうしたらいいのか。社員が幸せになるために、会社が儲けることが必要なのだと。そうして、経営理念の一番最初に「社員の幸せ」を掲げました。当初は、私の「想い」と社員との温度差があり、なかなかうまくいきませんでしたが、繰り返し伝えることで、少しずつ社員にも浸透していったと感じています。
3つのSを大切にする会社に
指針メンバーにより社内が活性化
当社は2018(平成30)年に、社名を「サンエス」に変更しました。これは一人の女子社員の案です。社名を社員に募集したところ、90もの社名が集まりました。全社員の投票でまず30社に絞り、計5回ほど会議を行い「サンエス」に決定しました。由来は「経営理念」である「社員の幸せ」「お客様の信頼」「会社の成長」、この3つの言葉の「幸せ」「信頼」「成長」のSを示しています。同時期に、社内や拠点間の風通しを良くするため、金沢、富山、高岡の各拠点から数名ずつ、事務社員数名、そこに役員をプラスした10数名で「指針メンバー」を作り、月1回、会議をするようになりました。それまでは拠点が違ったらやり方も違いましたが、別拠点に移ってもスムーズに仕事ができるよう、業務の統一化を図っています。例えば、金沢ではA資料、富山はB資料を使用しているが、どちらが効率が良いか。そうしたことを一つひとつ、見直していきました。予算の権限も指針メンバーに持たせることで、自ずと改善点に気づくようになり、2年目、3年目とびっくりするくらい変わりました。今では各拠点の代表が集まり、新たなプロジェクトを立ち上げる等、自主性が育ってきました。
今取り組んでいるのは、ICT化。ペーパーレスにして、社内をフリーアドレスにしたいと思っています。ICTのプロジェクトチームを作って、3人の社員に取り組んでもらっています。休日や行動予定もクラウドで共有できるようにして、時間短縮や業務の効率化につなげたいと思っています。評価制度は、公平な評価ができる仕組みを整えました。どの社員も頑張ったらその分、評価されるシステムです。技術の有無だけではない。性別も職種も関係なく、もっともっとできることがあるよ、と。仕事を通して、それぞれの社員が部下を育ててほしい。意欲さえあればどんどんいろんなことにチャレンジできる環境だと思っています。
仲間のために頑張ることが
自分に返ってくる
私の考え方のベースには、野球での経験と、野球をイチから教えてくれた親父の教えがあります。仲間のために、社員のために何とかしなければと思ってやったことが良い方に結び付き、自分が変われたと思っています。社員にも、仲間のために頑張ってほしい。人のために頑張ったことは、いずれ自分に返ってきます。会社として目指すのは、お客様から「あなたのところとやりたい」と思われる会社になること。工事ができ、サポートができる。会社として、自分のことだけではなく、人のことを考える。「ありがとう」と言ってもらえる仕事を重ねて、「住まいに関することなら何でも任せてください」と言えるような会社にしたいです。おかげさまで、売り上げも大きく伸びています。中小企業だからできることがあると思っています。少し意識が変われば、売り上げも大きく変わる。それが自信にもつながります。学生さんに伝えたいのは、学生時代のうちにいろいろな経験をして、嫌なことも率先してやれるような人間になってほしいということ。そして、仲間を大事にしてほしい。会社として求めるとしたら、親や兄弟など身近な人にも挨拶ができるとか、普通のことです。まずは学生生活を楽しんでほしいと思います。